えごま油の素朴な疑問・質問 Q&A (15) [健康と食習慣]

食物アレルギーの子どもをもつ主婦です。えごま油は食用油として安心して使用できますか?】(東京都足立区 女性Sさん)


[ひらめき][ひらめき]

食物(性)アレルギーに苦しんでいらっしゃるお子さんをお持ちの奥様や家族の方々のご苦労ははかりしれません。
毎食の料理メニューを考えたり、食材選び、登校などの外出時の食事対策など、ご思慮と工夫の種は尽きない筈です。

自身のささやかな経験から、言えることを交え、ご質問にお答えいたします。


まず、食物(性)アレルギーに対する基本的な疑問にぶつかります。
「なぜ、自分の身体に必要な食物の摂取に対して、阻害的な反応が起こるのか?」ということです。
ヒトの体は、その「食べた物」=栄養素によって作られます。
それなのに、ある重要な栄養素を含む食物を私たちの身体は拒否しているのです。
少し納得のいかない話です。

この疑問を理解するには、私たちの身体のしくみ、特に免疫機能を知る必要があります。
しかし、アレルギー反応を引き起こす免疫のしくみは大変複雑ですし、症例の発現の仕方は個別的であり、単一な機能面だけではなかなか語れません。
何しろ現代の生命科学のレベルでも解明されていることは、実に少ないのが現状です。
ですので、アウトラインをなぞりながら、基本が分かるようにお話しいたします。


食物(性)アレルギーは「食物を摂取した時に免疫機序(アレルギー)を介して不利益な症状が生体に及ぼされる場合」のこと、と辞書では定義されています。

私たちの「免疫」機能は、本来自らの身体を守るために備わったものの筈です。
ところが、事情は逆で、生体に「不利益」をもたらす場合を想定しなければならないというのです。

アレルギーとは、ギリシャ語のallos(変化する)とergon(力)の合成語で、1910年にオーストリアの臨床医ピルケーによって命名された言葉で、「一度経験した後で起こる反応の量と質的な変化」を意味します。
即ち、単なる病的な反応ではなく「免疫反応に基づく生体にとっては不利益な生体反応」と一般的に呼ばれるようになり、アレルゲン(アレルギーの原因となる抗原物質)との頻度の接触によって起こる、とされます。
症状が摂食から数時間程度と、出やすいことから「即時型過敏症」とも総称されます。

つまり、食事に含まれる異物(アレルゲン、抗原物質)との、たびたびの(頻度・頻回の)接触により、その抗体による免疫応答が過分に働き、逆に生体に不利益をもたらす場合のことを「食物アレルギー」ということになります。

ポイントは3点となります。
すなわち、アレルゲン、抗体と免疫反応、発現する病状です。

まず1点目は「アレルゲン」です。
端的に言えば、食物に含まれるタンパク質、または糖タンパクのことです。
発生率で卵・牛乳・大豆を3大アレルゲンと呼んだり、国の省令で牛乳・卵・落花生・ソバ・小麦粉を5大アレルゲンと呼びますが、実際はそれらに含まれるタンパク質がアレルゲンです。
5大アレルゲンに準じる20品目アレルゲン(アワビ、イカ、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、クルミ、鮭、サバ、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、松茸、桃、山芋、リンゴ、ゼラチン)もあります。

こうした食品品目に含まれるタンパク質が、一般に「人体を構成するタンパク質とは異種タンパク質であるため、排除の原理が働いて抗体が産生され、それによって過剰な免疫反応であるアレルギー症状を起こす」とされています。説明としては、間違っていませんが、ちょっと変です。

食品に含まれるタンパク質は、分子量単位としては相当に大きな構成物であり、注射器等で体内に直接注入でもしない限りは、万が一にも人の体内に潜り込むことはないはずです。
食物は口から消化管に送り込まれますが、消化管内はまだ体外なのであり、胃腸から分泌される消化分解酵素や腸内細菌の力でタンパク質も更に切断・分解され、本来何者の構成物であったか判別できないレベル(アミノ酸)にまで解体されてから、ようやく腸壁の細胞より取り込まれ血管に運ばれ体内へと取り込まれていくのです。
したがって、体内に取り込まれた他の動植物のタンパク質の構成単位の部品(アミノ酸)が「異種タンパク質」だと、免疫系が本当に理解できるのでしょうか。ちょっと変だと思いませんか。

ここら辺の肝心のメカニズムは、実はよく分かっていないのです。

生まれながらに、遺伝的に抗体が備わっている人がいる、ともいわれます。
しかし、であれば一生アレルゲンは不変の筈ですが、そんなこともないのです。子どもの成長と共にアレルギー体質の変遷は顕著では無いものの、アレルゲンが変化していく人も多く、例えば食物タンパク質からダニやホコリ、花粉へと移行していき、食物への反応は寛解に向かう例も多々あります。

生命にはその発生・発達のプロセスに於いて、クリティカル・ピリオッド(臨界期)という「脆弱性の窓」があるといわれています。乳幼児は消化機能が未熟なため大きな分子構造のタンパク質のまま吸収されて、抗体(レアギン)が出来てしまう、という説があります。
また、胎児として母体内で栄養補給を受けている間に、偶発的に母体と抗体(レアギン)を共有してしまう、という可能性の指摘もあります。


2点目が「抗体と免疫反応」です。
まずアレルゲン(抗原物質)が食物として口肛から胃から腸へ、消化分解酵素などに晒されながら分解・解体され、移行していきます。腸粘膜細胞から付き出したある突起は、この異物(タンパク質)の通過を見張っています。そして異物を捕まえるとAPC(抗原提示細胞)に取り込み、細胞内で部分的に消化して、小さなタンパク質の断片(ペプチド)にしてMHC(主要組織適合遺伝子複合体)の裂け目に挟み込まれます。
このペプチド断片はT細胞(Th2型細胞)に提示されます。MHCは、まるで保安官のように「こんな人相書のお尋ね者の一味(異質なタンパク質)を捕まて、今からお前に引き渡すから、仲間に伝えて準備態勢を整え、免疫反応を活性化させなさい」というようなアンバイで、ふるまいます。
または、そうしたストーリ-が考えられます。
続いてT細胞(Th2型細胞)は、直ちにIL-4,IL-5,IL-6などのサイトカイン(活性物質)を放出し、実働部隊のB細胞にIgE抗体の合成を指示します。作られたIgE抗体は、組織中の肥満細胞の受容体に結合し、そこでアレルゲンとの反応が起こるとヒスタミン、セロトニンなどの化学伝達物質が放出され、皮膚、気管支、粘膜細胞などに働いて拒否・排除の反応であるアレルギーが発生します。

こうした免疫系の反応は、しかし、すべてT細胞によってコントロールされ、仕組まれています。
T細胞、今回の場合はTh2型細胞ですが、細菌感染やウイルスの侵入に対してはTh1型細胞が担当・対応します。このT細胞(Th2型)は、最初にアレルゲン(異質タンパク質)が食物として取り込まれた際に、非自己物質としてアレルゲンを認識・学習済みであり、すでに排除のための抗体(IgE)を用意して、待ちかまえていたのです。
すなわち、アレルギー体質=拒否・排除の体制は、すでに用意されていたことになります。
先程の話の続きで言えば、そもそも「お尋ね者の人相書」を作っておいたのは、実はこのT細胞だったのです。


3点目が「発現する症状」です。
アレルギーの発現は、さらには細胞内に新たにプロスタグランジン(PG)やロイコトルエンなどの生理活性物質を合成分泌させ、平滑筋を長時間にわたって収縮させたりして、様々な症状を過敏に同時的に発生させて、発作状態を引き起こします。極端な場合は、アナフラキシーショックで死に至る場合もあります。


実は、食物アレルギーの増加の歴史は、日本では戦後からだ、といわれています。
上下水道の整備、環境の浄化等により、それまで問題になっていた感染症が激減し、経済成長は人々の栄養状態を劇的に良くし、細菌等による感染を過去のものへと押しやったのです。
逆に、植生を無視した杉の大量植林が行われ、住宅は洋式化され、自動車等の普及による排気ガスや工場の大気汚染の増加等の要因で粘膜からのアレルゲンの吸収や肥満細胞への刺激が高まったのです。

こうした大きな環境変化に伴って、本来細菌等の感染症に対処するために口腔や上気道に配置されていたT細胞(Th1型)は、活動の場が狭まり、辺地に押しやられ、代わりにTh2型のT細胞が優位な位置を獲得してきたのだ、と考えられています。
その結果、IgE抗体が大量に作られ、アレルゲンに過敏に反応するようになったのでは、と考えられます。


以上が、物語風になってしまいましたが、食物アレルギーについての「なぜ」に対する回答です。


そして、今回の「えごま油」についてのご質問に対する回答が以下になります。


まず、えごま油を食用油として、アレルギー児への食事利用は、まったく問題ないと言えるでしょう。
理由は、エゴマはアレルゲンを含まないからです。
エゴマの「ゴマ」は胡麻(真ゴマにはアレルギーを発症する場合がある)を連想させ、アレルゲンではないかと思われる方もおられますが、誤解です。
エゴマは、シソ科の1年草です。したがって、アレルゲンの心配がありません。

さらに、えごま油に60%以上含まれるα-リノレン酸という脂肪酸は、上記でも出てきた生理活性物質であるプロスタグランジン(PG)の原料ともなっていますが、アレルギー反応の活性を受け持つリノール酸(またはアラキドン酸)とは逆の役割、すなわちアレルギー反応の抑制を受け持つPG(G3)の原料となっているのです。

えごま油に含まれるα-リノレン酸は、食物アレルギー反応を活性させることなく、抑制に導く効果が実証されています。


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なお、えごま油商品の詳細は、サンマザーのURLで。 http://www.sunmother.net/

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